「家庭環境がつらい」と感じるとき、まず分けて整理する

こんにちは。ケルソンファミリークリニック院長の田中良恵です。診察室では、「家庭環境のせいで調子が悪い気がする」というお話をよく伺います。ただ、ひとことで家庭環境といっても、指しているものは人によってずいぶん違います。
最初に、3つに分けて考えてみてください。
- 今、一緒に暮らしている環境(配偶者・パートナー、子ども、親の介護、同居家族との関係、経済的な事情、住まいの狭さや騒音など)
- 育ってきた環境(子どものころの家庭のこと。思い出すとつらくなる記憶も含みます)
- 家族の誰かの不調(本人ではなく、家族の心や体の問題が家庭全体の負担になっている状態)
この3つは、負担の中身も、取れる手立ても違います。ごちゃまぜのまま「家庭環境が悪いから仕方ない」と結論づけてしまうと、動かせる部分まで見えなくなってしまうことがあります。紙の端でかまいませんので、「今のこと」「昔のこと」「家族のこと」と書き分けてみるところから始めるのがおすすめです。
今の家庭環境で負担が大きくなっているときのサイン

環境の負担は、気持ちよりも先に体や生活に出ることがあります。ご自身を責める方向ではなく、「負担が溜まっているかどうか」を確かめる目安として読んでみてください。
| 出方 | よくみられる様子 |
|---|---|
| 体 | 寝つけない、夜中に何度も目が覚める、朝起きられない、食欲が落ちる、あるいは食べ過ぎてしまう、頭痛・胃の不快感・めまいが続く |
| 気持ち | 家に帰るのが重い、些細なことでいら立つ、涙が出る、何をしても楽しいと感じにくい、自分を責める考えが止まらない |
| 生活 | 家事や仕事の段取りが組めない、約束を忘れる、人と会うのを避ける、お酒の量が増える |
いくつか当てはまるからといって、すぐに病気というわけではありません。環境の負担が強いときに、誰にでも起こりうる反応です。気をつけたいのは、この状態が休んでも戻らないとき、だんだん強くなっていくとき、そして仕事や家事など日常の役割が回らなくなってきたとき。その段階になったら、環境を変える工夫と並行して、体と心の状態そのものを診てもらう段階だと考えてよいと思います。
なお、めまいのように体の症状が前面に出ている場合は、内科的な原因がないかを先に確かめたほうが近道になることもあります。感じ方による見分けの整理は内科でめまいを相談するとき|3つの感じ方と受診の目安にまとめています。
育った家庭環境の影響を感じるとき
「親との関係が今も尾を引いている気がする」「人に頼るのがどうしても苦手」。そうした感覚を、育った家庭環境と結びつけて考える方は少なくありません。
ここで大切にしていただきたいのは、原因探しをゴールにしないということです。過去の環境は変えられませんし、原因が特定できたからといって今日の不眠がすぐ軽くなるわけでもありません。診察でも、「どこが悪かったのか」より「今、何がしんどくて、どこなら動かせるか」に時間を使うことが多いです。
一方で、過去の出来事を思い出すと動悸がする、眠れなくなる、考えが頭から離れない、といった形で日常に差し支えているときは、その反応自体が相談の対象になります。無理にご自分で思い出して整理しようとすると、かえってつらくなることがあります。話す順番やペースを一緒に決めながら進めることもできますので、「まだ話せる気がしない」という段階でご相談いただいても大丈夫です。
子どもの様子が気になるとき、家庭環境をどう見るか
お子さんが学校へ行きしぶる、食事の様子が変わった、夜に眠れない。そんなとき、「うちの家庭環境が原因では」と考えてしまう親御さんはとても多いです。
ただ、子どもの不調は、家庭・学校・友人関係・体調・発達の特性など、複数の要素が重なって表に出ます。ひとつの原因に決めてしまうと、本当は手を打てた別の要素が見落とされることがあります。受診の場では、次のような点を一緒に確認していきます。
- いつごろから、どんな場面で起きているか(平日だけか、休日もか)
- 睡眠・食事・体重の変化があるか
- 体の症状(腹痛、頭痛など)が出ているか
- 学校や園で変化があったか
- 家庭の中で最近変わったこと(転居、同居家族の増減、ご家族の病気など)
親御さんの関わり方を責めるために聞くのではありません。お子さんが過ごしやすくなる条件を探すために、情報を集めていると考えていただければと思います。食事量や体重の変化が大きいときは、摂食障害の相談は何科か|家族だけで行くときの初診の流れも参考になります。
どこに相談すればよいか|選び方の基準

相談先は「一番有名なところ」ではなく、今いちばん困っていることがどこに当たるかで選ぶと迷いにくくなります。
| 困っていることの中心 | 向いている相談先 |
|---|---|
| 眠れない、食べられない、気分の落ち込みが続くなど、心身の症状 | 心療内科・精神科などの医療機関 |
| 生活費、住まい、介護、養育などの生活面 | 市区町村の福祉窓口、地域包括支援センター |
| 学校での様子、不登校 | 学校のスクールカウンセラー、教育相談室 |
| 暴力や身の危険があるとき | 警察、配偶者暴力相談支援センターなどの公的窓口 |
医療機関を選ぶときは、①その悩みの領域を診ているか、②通い続けられる距離や時間帯か、③家族の同席や家族だけの相談に対応しているか、の3点を確認しておくと、初回で話が進みやすくなります。身の危険があるときは、医療より先に公的な保護の窓口へご連絡ください。
受診を考える目安
「病院に行くほどではないかも」と迷う方が多いので、目安を整理しておきます。
- 眠れない・食べられない状態が、休みをとっても戻らないとき
- 仕事、家事、育児など、これまでできていたことが回らなくなってきたとき
- 気分の落ち込みやいら立ちが、だんだん強くなっているとき
- お酒や薬に頼る量が増えているとき
- 消えてしまいたいという考えが浮かぶとき(この場合は早めにご相談ください)
当院は心療内科・精神科・内科を併設していますので、「気分の問題なのか体の問題なのか自分でも分からない」という状態のままお越しいただいて構いません。診療時間は午前9:00〜12:30、午後14:30〜18:00で、水曜は休診です。土日祝も診療していますので、平日に時間が取りにくい方もご相談いただけます。予約は電話・LINE・メール・ホームページから受け付けていますが、予約なしでの受診も可能です(予約の方を優先してご案内しています)。
本人が受診を嫌がるとき|家族だけの相談という方法
家庭環境のご相談では、「困っているのは家族のほうで、本人は病院に行きたがらない」という状況が本当によくあります。
当院では、ご本人が受診できない・受診を望まない場合に、ご家族だけでお越しいただく自費の相談を受けています。費用は1回13,200円(税込)で、健康保険は使えません。ご本人を診察していないため、この相談だけで診断やお薬の処方はできない、という制約があります。できるのは、状況を伺ったうえで、関わり方の整理、利用できる制度の案内、次にどこへつなぐかの検討です。必要に応じて、その後の受診や訪問診療のご相談につなげることもあります。
ご本人が外出できない状態が続いている場合の選択肢については、訪問診療の精神科を練馬区で探すとき|対象と費用の目安にまとめています。
家庭環境の話は、どこから話せばよいか分からなくなりがちです。まとまっていなくてかまいません。「家のことで疲れている」の一言から始めていただければ、順番は一緒に整理していきます。