「副反応が心配で決められない」というご相談は珍しくありません
こんにちは。ケルソンファミリークリニック院長の田中良恵です。子宮頸がん(HPV)ワクチンについて、「受けたほうがいいのは分かるけれど、副反応のニュースを見て迷っている」というお声を、診察室でもよく伺います。お子さんのこととなればなおさらですよね。
迷いを解くいちばんの材料は、何が、どのくらいの範囲で報告されているのかを、公的に確認できる情報で把握することだと思っています。この記事では、厚生労働省が公開しているHPVワクチンのリーフレット(小学校6年生〜高校1年生相当の女の子と保護者向け・詳細版)とHPVワクチンに関するQ&Aで確認できる内容にしぼって、副反応の種類、接種後の過ごし方、心配なときにどこへ相談できるのかを整理していきます。
そもそも「副反応」とは何を指す言葉なのか
最初にここを分けておくと、情報がぐっと読みやすくなります。
副反応とは、ワクチンを接種したことによって起こる、免疫がつくこと以外の反応のことです。一方、接種後に起きた出来事すべて(ワクチンとの因果関係が分からないものも含む)は有害事象と呼ばれ、区別されています。厚生労働省の副反応疑い報告制度では、因果関係がはっきりしないものも幅広く集めて評価する仕組みになっているため、「報告された症状=ワクチンが原因と確定した症状」ではありません。
ニュースや個人の投稿では、この2つが混ざって伝わることがあります。読むときに「これは副反応の話か、報告された出来事の話か」と一度置き換えてみると、情報の温度差が整理しやすくなります。
報告されている症状を、大きく4つに分けて見る

厚生労働省のリーフレットでは、接種後に起こりうる症状が整理されています。ここでは性質ごとに4つに分けてみます。
| 分類 | 主な症状 | 考え方 |
|---|---|---|
| 注射した部分の症状 | 痛み、赤み、腫れ、かゆみ | 接種後にみられやすい反応。多くは時間とともに軽くなっていきます |
| 全身の症状 | 発熱、頭痛、だるさ、吐き気、めまい、筋肉や関節の痛み | いずれも起こりうる反応として記載されています |
| 接種直後の反応 | 失神、立ちくらみ(血管迷走神経反射) | 注射の痛みや緊張がきっかけで起こることがあります |
| まれに報告される重い症状 | アナフィラキシー、ギラン・バレー症候群、急性散在性脳脊髄炎(ADEM) | 頻度は高くありませんが、重い症状として記載されています |
出典:厚生労働省「ヒトパピローマウイルス感染症(HPVワクチン)」のページおよび同省のHPVワクチンリーフレット(詳細版)。
多いのは、いちばん上の「注射した部分の症状」です。腕が痛い、押すと重い、といった訴えですね。これは体が免疫をつくる過程で起きる反応で、HPVワクチンに限らず他の予防接種でもよく見られるものです。
接種直後の失神は、事前の備えで身を守れる部分です
副反応の話のなかで、私が診察室でいちばん丁寧にお伝えしているのがここです。
注射の痛みや「これから打たれる」という緊張がきっかけになって、血圧や脈が一時的に下がり、気が遠くなったり倒れたりすることがあります。これは血管迷走神経反射と呼ばれるもので、HPVワクチンそのものの成分による反応というより、注射という行為に対して起こる反応です。中学生・高校生の年代では珍しくありません。
問題になるのは、倒れたときに頭や顔を打ってしまうことです。そのため厚生労働省のリーフレットでは、接種後30分程度は、背もたれのある椅子に座るなどして様子をみることがすすめられています。立ち上がってすぐ移動しない、階段や自転車をいきなり使わない。これだけでも、けがのリスクは減らせます。
当院でも、接種のあとは待合でしばらく座ってお過ごしいただき、顔色や様子を確認してからお帰りいただいています。「気分が悪くなりそう」と感じたら、我慢せず横になれる場所を。付き添いの保護者の方にも、その場でお声かけください。
接種当日と、そのあと数日の過ごし方

当日
- 接種前に食事を抜かない。空腹や睡眠不足は、立ちくらみが起きやすい状態をつくります
- 接種後はしばらく座って過ごし、気分の変化がないか確かめる
- 入浴は通常どおりで差し支えありませんが、接種した部分を強くこすらない
- 激しい運動は控えめに。部活動などは当日の予定を見直しておくと動きやすくなります
翌日以降
腕の痛みや腫れ、微熱、だるさが出ることがあります。多くは日を追って軽くなっていきますが、次のようなときは受診の相談をと考えてください。
- 腫れや赤みが引くどころか広がっていく、熱を持って強く痛む
- 発熱やだるさが軽くならず、むしろ悪化していく
- 息苦しさ、じんましん、顔や唇の腫れが出た(この場合は早急に)
- 手足に力が入りにくい、しびれる、歩きにくいなど、体の動きの異変がある
- 日常生活に支障が出るほどの症状が続いている
「何日たったら」という線引きよりも、良くなる方向に向かっているか、変わらないか、悪くなっているかという向きで見ていただくほうが判断しやすいと思います。迷う段階でご連絡いただいて構いません。
「接種後に続く多様な症状」と、相談できる医療機関
HPVワクチンをめぐって最も不安が大きいのは、接種後に広い範囲の痛みや手足の動かしにくさ、意図しない体の動きなどの症状が報告されたことだと思います。国内では2013年に積極的な接種勧奨が差し控えられ、その後の検討を経て、2022年4月から個別の接種勧奨が再開されています(厚生労働省)。
あわせて国は、接種後に生じた症状を診療するための協力医療機関を各都道府県に設けています。「どこに相談したらいいのか分からない」という状態を避けるための仕組みで、まずは接種を受けた医療機関やかかりつけ医に相談し、必要に応じてそうした医療機関につないでもらう流れになります。お住まいの自治体の予防接種担当窓口でも、相談先の案内を受けられます。
症状の原因がすぐにはっきりしない場合でも、つらさそのものへの対応は進められます。「気のせいでは」と言われるのではないか、と受診をためらう方もいらっしゃいますが、体の症状もこころの負担も、どちらも診る対象です。当院は心療内科・精神科・内科を標榜しており、身体の症状と生活のしんどさを切り離さずに伺う姿勢を大切にしています。
受けるかどうかを決めるときの、考え方の並べ方
「副反応が怖い」という気持ちと、「受けないままでいいのか」という気持ち。この2つは、どちらかが正しいという話ではありません。決めるときには、次の3つを並べて見ていただくと考えがまとまりやすくなります。
- ワクチンで何を目指すのか:HPVワクチンは、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルスの感染を防ぐことを目的としたワクチンです。ただしすべての型のウイルスを防ぐものではないため、接種の有無にかかわらず、対象年齢になったら子宮頸がん検診を受けることがすすめられています(厚生労働省)。
- 起こりうる副反応の内容:この記事で整理したとおり、多いのは接種部位の痛みや腫れで、重い症状はまれとされています。
- 困ったときの相談先があるか:接種する医療機関に相談できるか、協力医療機関の仕組みを知っているか。ここがはっきりしていると、判断の材料が一つ増えます。
そのうえで、迷いが残るなら「今は決めない」という選択も含めて、接種前に医師と話していただいて構いません。制度上の対象期間や回数は決まっていますので、期限だけは確認しておくと後悔が少なくなります。
練馬区で接種を考えるとき
HPVワクチンは、対象となる方が定期接種として公費で受けられる仕組みになっています。対象年齢や接種回数、接種の間隔は制度で定められており、区の案内で確認するのが確実です。回数や間隔の考え方は、子宮頸がんワクチンは練馬区の公費対象?回数と間隔がわかるでも当院なりに整理しています。
当院(練馬区大泉学園町5丁目6-22)でも、練馬区の公費対象となる方のHPVワクチン接種を院内でご案内しています。診療時間は午前9:00〜12:30、午後14:30〜18:00で、水曜が休診です。土日祝も診療していますので、平日に学校や仕事を休みにくいご家庭でも予定を組みやすいかと思います。予約は電話・LINE・メール・ホームページから可能で、予約なしでも受診いただけます(予約優先)。
「接種の前に副反応の話だけ聞きたい」というご相談も歓迎です。その日に打たなくても構いません。他の予防接種とあわせて考えたい方は、練馬区のインフルエンザ予防接種|時期と費用がわかるもご覧ください。
付き添う保護者の方へ
接種の場面でお子さんが強く緊張していると、その緊張自体が立ちくらみの引き金になることがあります。「痛くないよ」と無理に言い切るより、「少しチクッとするけど、終わったらしばらく座って休もうね」と流れを先に伝えておくほうが、体が身構えにくくなります。
そして、接種後に体調の変化があったときは、いつから、どんな症状が、どのくらい続いているかをメモしておいてください。受診の場でそのメモがあると、話が早く進みます。スマートフォンのメモで十分です。