ご家族の様子がいつもと違う、暑い場所から戻ってふらついている——そんなとき、まず行うのは涼しい場所へ移して体を冷やすことと、水分と塩分を少しずつ補うことです。この記事では、熱中症の家でできる応急処置として、体を冷やす場所と冷やし方、水分補給のコツ、休ませ方、そして受診を考える目安までを、内科医の視点でご案内します。順番が決まっているだけで、いざというときの動き出しはずいぶん楽になります。
結論:熱中症の応急処置は、「涼しい場所へ移す・体を冷やす・水分と塩分をとる・安静にする」の4つが基本です。意識がはっきりしない、自分で水分がとれない、休んでも症状が改善しないときは、ためらわず医療機関や救急への相談を検討してください。
家でできる熱中症の応急処置|体の冷やし方と水分補給の手順

熱中症が疑われるときの家でできる応急処置は、涼しい場所への移動、衣服をゆるめる、体の冷やし方、水分補給、安静という順番で進めると落ち着いて対応しやすくなります。まずは次の手順に沿って動いてみてください。
- エアコンの効いた室内や風通しのよい日陰など、涼しい場所へ移します。
- ベルトや襟元など、体を締めつけている衣服をゆるめて熱を逃がしやすくします。
- 首の付け根・わきの下・脚のつけ根を中心に体を冷やします。
- 経口補水液などで、水分と塩分を少量ずつこまめに補給します。
- 楽な姿勢で横にならせ、様子を見ながら安静にします。
環境省『熱中症環境保健マニュアル2022』でも、応急処置の柱として「涼しい環境への避難」「脱衣と冷却」「水分・塩分の補給」が示されています。順番に迷ったら、この3つに立ち返ると判断しやすくなります。
まず覚えておく2つ
冷やす場所は首の付け根・わきの下・脚のつけ根。飲みものは水分と塩分を一緒に、少しずつ。この2つを家族で共有しておくと、当日の判断が早くなります。
熱中症で冷やす場所はどこ?首・わきの下・脚のつけ根が基本
熱中症で身体を冷やすときは、首の付け根・わきの下・脚のつけ根(太もものつけ根)など、太い血管が皮膚の近くを通る部位を集中的に冷やすと、効率よく熱を逃がしやすくなります。どこを冷やすか迷ったときは、この3か所を思い出してください。冷やす部位ごとの目安は次のとおりです。
| 冷やす場所 | あて方の目安 | 気をつけたい点 |
|---|---|---|
| 首の付け根(左右) | タオルで包んだ保冷剤や氷のうを軽くあてる | 強く押しつけず、位置をこまめに変える |
| わきの下 | 腕を少し開き、はさむようにあてる | 本人が寒がるときは無理に続けない |
| 脚のつけ根 | 衣服の上からでも可。左右にあてる | 横になった姿勢のまま行う |
冷やす部位を押さえたうえで、部屋の温度を下げる、風を送るといった環境づくりを同時に進めると、体温が下がりやすい状況をつくれます。冷やす部位は一か所にこだわらず、可能なら左右そろえて同時にあてると熱が逃げやすくなります。
冷やすものがすぐにないときの身体の冷やし方
保冷剤が見つからないときでも、家にあるもので身体を冷やすことはできます。あわてて探し回るより、先に涼しい場所へ移して風を送るほうが確実です。
- ぬれタオルで体をふき、扇風機やうちわで風を送って気化熱で冷やします。全身の皮膚から熱を逃がす方法で、冷やすものが少ないときにも取り入れやすい身体の冷やし方です。
- すぐに冷やせるものがないときは、水道水でぬらしたタオルでも構いません。
- 冷たいペットボトル飲料も、タオルで包めば一時的に代用できます。
- 霧吹きで肌に水を吹きかけながら扇風機の風をあてる方法も、風があるほど熱が逃げやすくなります。
- 強い寒気やふるえが出たときは冷やしすぎのサインのこともあるため、様子を見ながら加減します。
保冷剤や氷のうは、素肌に長時間あて続けると皮膚を傷めることがあります。必ずタオルで包み、位置をこまめに変えてください。
どのくらい冷やす?やめどきと冷やしすぎのサイン
冷やす時間を何分と決めるより、ご本人の様子を手がかりにするほうが実際的です。次のような変化を目安にして、強さを加減してみてください。
- 受け答えがはっきりし、汗が引いて体が楽そうになってきたら、冷やす強さをゆるめていきます。
- ふるえ、強い寒気、皮膚が白っぽく冷たくなるといった様子が出たら、いったん冷却を控えて保温に切り替えます。
- いったん楽になっても、涼しい部屋での休息はしばらく続けます。すぐに暑い場所へ戻らないことが大切です。
- 冷やしても改善が見られない、かえって受け答えが鈍くなるときは、冷やしながら救急要請を検討します。
体温計があれば参考になりますが、数値だけで判断せず、意識の様子と水分がとれるかどうかを合わせて見ていくと迷いにくくなります。
水分補給の取り方|経口補水液と塩分の目安
水分補給は、経口補水液のように水分と塩分(電解質)を一緒にとれるものを、一度に大量ではなく少量ずつこまめにとる方法が向いています。汗で失われるのは水分だけでなく塩分も含まれるため、水やお茶だけでは補いきれないことがあります。
| 飲みもの | 特徴 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 経口補水液 | 水分と塩分・糖分のバランスが調整されている | 汗を多くかいた・軽い脱水が疑われるとき |
| スポーツドリンク | 手に入りやすいが糖分が多めのものもある | 手元に経口補水液がないとき |
| 水+食塩(自作の食塩水) | あくまで一時的な代用 | 市販品がすぐ用意できないとき |
市販の経口補水液が手元にないときの一時的な代用としては、環境省『熱中症環境保健マニュアル2022』で0.1〜0.2%の食塩水(水1リットルあたり食塩1〜2g程度)が紹介されています。あくまで応急的な代用ですので、夏場は市販の経口補水液を数本ストックしておくと動きやすくなります。吐き気が強い、飲んでもすぐ吐いてしまうときは、無理に飲ませず受診を検討してください。
熱中症の応急処置でやってはいけないこと
よかれと思って行った手当てが、かえって負担になることもあります。次の点は避けてください。
- 意識がはっきりしない方へ無理に水を飲ませること。のどに詰まるおそれがあります。
- 氷や保冷剤を素肌に長時間あて続けること。皮膚を傷めることがあります。
- 「少し休めば治る」と考えて、重いサインがあるのに家での様子見だけを続けること。
- 本人をひとりにして眠らせたまま、しばらく確認しないこと。反応の変化に気づきにくくなります。
- 塩分や水分の制限がある持病の方に、自己判断で経口補水液を大量にすすめること。
迷ったときは、冷やしながら助けを呼ぶ、という並行の動きで構いません。手当てを止めて電話をかけに行く必要はなく、ご家族で役割を分けられると動きやすくなります。
熱中症のサインと重症度の見分け方

熱中症のサインは、軽い段階のめまいや立ちくらみから、頭痛・吐き気、そして意識がもうろうとする重い段階まで幅があり、症状の程度によって家での対応と受診の判断が変わります。日本救急医学会『熱中症診療ガイドライン2015』でも、I度〜III度の3段階で整理されています。次の目安を参考に見分けてみてください。
| 段階 | 主なサイン | 対応の目安 |
|---|---|---|
| 軽症(I度) | めまい・立ちくらみ・こむら返り・大量の汗 | 涼しい場所で休み、体を冷やし水分補給。改善すれば家で経過を見る |
| 中等症(II度) | 頭痛・吐き気・体のだるさ・集中力の低下 | 応急処置をしつつ、改善しなければ受診を検討 |
| 重症(III度) | 意識がはっきりしない・けいれん・呼びかけへの反応が鈍い・高い体温 | 救急への連絡を含め、すぐに医療の対応を検討 |
特に、自分で水分がとれない、まっすぐ歩けない、受け答えがおかしいといった様子が見られるときは、家での応急処置にこだわらず、119番を含めて早めに相談することが大切です。判断に迷う段階でも、冷やす手当てを続けながら相談して構いません。
家での休ませ方と回復までの過ごし方
熱中症の方を休ませるときは、風通しのよい涼しい部屋で横にならせ、足を少し高くして脳や心臓に血液が戻りやすい姿勢をとると楽になりやすいです。回復までは無理をさせず、次の点に気をつけて過ごします。
- あお向けで足を軽く高くし、吐き気があるときは横向きにして吐いたものが詰まらないようにします。
- 症状が落ち着いても、その日は入浴や運動、外出を控えめにしてゆっくり休みます。
- 水分と塩分をこまめにとりながら、少しずつ食事を戻していきます。
- いったん良くなっても、夕方や翌日に再びだるさが出ることがあるため、しばらくは様子を見ます。
- ひとりにせず、時々声をかけて受け答えの様子を確かめます。反応が鈍くなってきたら判断を切り替えてください。
回復した夜に寝苦しさが続き、眠りが浅くなる方もいらっしゃいます。夏の睡眠の乱れが気になるときは、当院の記事夏の寝苦しい熱帯夜で眠れない|受診の目安と見分け方もあわせてご覧ください。
子ども・高齢者・持病のある方で気をつけたいこと
子どもや高齢者、持病のある方は、体温調節やのどの渇きを感じる力が弱まりやすく、まわりが早めに気づいて声をかけることが大切です。対象によって注意したい点が少しずつ異なります。
- 子ども:地面に近く体温が上がりやすいうえ、自分で不調を伝えにくいため、顔の赤みや汗の量、機嫌の変化に注意します。
- 高齢者:のどの渇きを感じにくく、暑さも自覚しづらいため、時間を決めて水分をすすめ、室温は本人任せにしすぎないようにします。日ごろの備えは当院の記事高齢者の熱中症予防|初期サインと日常の対策にまとめています。
- 持病のある方:心臓や腎臓の病気などで水分・塩分の量に制限がある場合は、自己判断で増やす前にかかりつけへ相談してください。
内科医の視点で見る受診の目安(練馬区・大泉学園エリアの備え)
内科医の視点でみると、水分がとれない・嘔吐を繰り返す・意識がぼんやりする・けいれんがあるといった場合は、家での応急処置だけに頼らず受診を検討する目安になります。判断に迷うときの受診サインを整理しておきます。
- 応急処置をしても30分ほどで改善が見られない、または悪化していく。
- 水分をとってもすぐ吐いてしまい、脱水が進みそうなとき。
- もともと持病がある方や高齢の方で、いつもと様子が明らかに違うとき。
- 意識障害・けいれん・体が熱いのに汗が出ないといった重いサインがあるときは、救急(119番)への連絡を含めて対応を検討します。
当院(ケルソンファミリークリニック/東京都練馬区大泉学園町5-6-22、西武バス「大泉郵便局」下車 徒歩1分)は、心療内科・精神科に加えて内科も標榜しており、めまいや腹痛、発熱などの体調不良のご相談を受けています。診療時間は午前9:00〜12:30、午後14:30〜18:00で、水曜が休診日です。土日祝・年末年始も診療しているため、暑さで体調をくずしやすい連休中の相談先としてもお使いいただけます。ご予約は電話・LINE・メール・ホームページから受け付けており、予約優先ではありますが、予約なしでの受診も可能です。お車の方には提携駐車場(タイムズ大泉学園町第2・第4)の割引チケットをお渡ししています。また、当院では火曜・金曜・土曜の午前のみ送迎を行っています(9:15〜受付、土曜は原則としてクリニックと大泉学園駅の間)。なお、意識がはっきりしないなどの重いサインがあるときは、当院にご連絡いただくより先に救急要請をご検討ください。
暑さによる体調不良のあとに、眠れない・気分が落ち込むといったつらさが続くこともあります。当院は心療内科ベースのクリニックですので、体と気持ちの両方をまとめてご相談いただけます。通いやすい受診先の選び方は当院の記事練馬のクリニック選び|土日祝も通える受診先の決め方がわかる、熱中症の受診タイミングをさらに詳しく知りたい方は熱中症の応急処置と受診目安|大泉学園の内科が解説をご覧ください。おなかの症状が続く場合は腹痛で内科を受診する目安|大泉学園で迷ったときも参考になります。
家庭でできる熱中症予防のポイント(環境と水分)
熱中症の予防は、室内の温度管理とこまめな水分補給を組み合わせることが基本で、暑さを我慢しないことが体を守ることにつながります。次のポイントを日々の暮らしに取り入れてみてください。
- 厚生労働省の建築物環境衛生管理基準では、室温をおおむね18℃以上28℃以下に保つことが基準として定められています。家庭でも一つの目安になりますが、体感には個人差があるため、暑いと感じたら我慢せず調整します。
- 環境省『熱中症予防情報サイト』では暑さ指数(WBGT)が公表されています。外出や運動の前に確認しておくと、その日の過ごし方を決めやすくなります。
- のどが渇く前に、コップ1杯程度をこまめに飲むことを習慣にします。
- 汗を多くかく日は、水だけでなく塩分も一緒に補います。
- 外出時は日陰や帽子を活用し、風通しのよい服装を選びます。
- 就寝中も室温が上がりやすいため、夜間もエアコンや扇風機を上手に使います。
暑い時期は、いつもの手当てを家族で共有しておくことが何よりの備えになります。冷やす場所は首・わき・脚のつけ根、飲みものは水分と塩分を少しずつ。この2つを覚えておくだけでも、いざというときの動き出しが変わります。